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千葉地方裁判所 平成8年(わ)879号 判決

裁判所書記官

及川文子

本店の所在地

千葉県銚子市小浜町二六四四番地八

法人の名称

株式会社タカマサ

(代表者代表取締役 梅田栄吉こと呂栄吉)

国籍

大韓民国

住居

東京都江東区亀戸六丁目四八番七号

会社役員

梅田栄吉こと呂栄吉

一九四四年一月四日生

右の者に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官竹内寛志、弁護人砂川義信各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社タカマサを罰金二一〇〇万円に、被告人梅田栄吉こと呂栄吉を懲役一年二月にそれぞれ処する。

被告人梅田栄吉こと呂栄吉に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社タカマサ(以下「被告人会社」という。)は、千葉県銚子市小浜町二六四四番地八に本店を置き、鋼板の切断、加工及び販売等を目的とする資本金五〇〇万円(平成八年一月二〇日以後は一〇〇〇万円)の株式会社であり、被告人梅田栄吉こと呂栄吉(以下「被告人呂」という。)は、被告人会社の実質的経営者(平成七年三月三一日以後は代表取締役)として被告人会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人呂は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の材料仕入高及び外注加工費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成二年九月一日から同三年八月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が一億三〇一三万六七円であったにもかかわらず、同年一〇月三〇日、千葉県銚子市栄町二丁目一番地一所在の銚子税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一九九六万九四七五円で、これに対する法人税額が六七〇万五二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額四八〇一万五六〇〇円と右申告税額との差額四一三一万四〇〇円を免れ

第二  平成三年九月一日から同四年八月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が七一六五万三八四二円であったにもかかわらず、同年一〇月三〇日、前記銚子税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二〇一八万八五六三円で、これに対する法人税額が六七七万二三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額二六〇七万一七〇〇円と右申告税額との差額一九二九万九四〇〇円を免れ

第三  平成四年九月一日から同五年八月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が三七〇九万七三四二円であったにもかかわらず、同年一〇月二九日、前記銚子税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六三五万二二二四円で、これに対する法人税額が一七四万二二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額一三一一万五〇〇〇円と右申告税額との差額一一三七万二八〇〇円を免れ

第四  平成五年九月一日から同六年八月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が二七二五万六三三六円であったにもかかわらず、同年一〇月三一日、前記銚子税務署において、同税務署長に対し、その欠損金額が一六四六万二三三二円で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額九三六万四七〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

(注)括弧内の数字は、証拠等関係カードに記載された検察官請求証拠の甲乙別の番号を示す。

判示事実全部について

一  被告人呂の当公判廷における供述

一  被告人呂の検察官に対する各供述調書(乙一ないし四)

一  坂本成幸こと金成煥(甲一六)、清水良雄(甲一七)、守屋初江(甲一八)、増田理(甲二一)の検察官に対する各供述調書

一  伊知地正一(甲一九)、香取成美(甲二〇)、三道謙二(甲二二、二三)、川口笑子(甲二四)、布施篤夫(甲二五)、高萩和紀(甲二六)、佐藤美枝子(甲二七)及び藤博彦(甲二八)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  検察事務官作成の各捜査報告書(甲二、一四)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料(損益)(甲一五)

一  千葉地方法務局銚子出張所登記官宮山靖夫(甲三)及び同遠藤憲(甲三二)作成の各登記簿謄本

一  千葉地方法務局銚子出張所登記官宮山靖夫作成の各閉鎖登記簿謄本(甲八、九)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲一〇)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲一一)

判示第三、第四の事実について

一  検察官作成の捜査報告書(甲三一)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲一二)

判示第四の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲一三)

(法令の適用)

被告人会社及び被告人呂の判決各行為は、各事業年度毎に、いずれも法人税法一五九条一項(被告人会社についてはさらに同法一六四条一項)に該当するところ、被告人会社の判示第一、第二の行為については情状に照らし、同法一五九条二項を適用し、被告人呂については所得刑中懲役刑を選択し、以上は平成七年法律第九一号(刑法の一部を改正する法律)附則二条一項本文により、同法による改正前の刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項により合算した金額の範囲内で罰金二一〇〇万円に処し、被告人呂については、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で懲役一年二月に処し、同被告人に対し、同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告人会社の実質的経営者である被告人呂が、被告人会社の業務に関し法人税を免れるべく、架空の材料仕入高及び外注加工費を計上するなどの方法により所得を圧縮した上、虚偽過小の法人税確定申告をなし、被告人会社の平成三年八月期から同六年八月期までの正規の法人税額合計九六五六万七〇〇〇円のうちの約八四・二四パーセントにあたる八一三四万七三〇〇円を免れたという事案である。

このような行為は、誠実な納税者を裏切る極めて反社会性の強い行為である。また、被告人会社が免れた法人税のほ脱率は右のとおり極めて高率であり、免れた税額も右のとおり多額である。被告人呂は、自己が実質的に雇っている被告人会社の代表取締役に指示し、かつ、謝礼金を条件に知人を巻き込んで、架空の取引先を作出して架空の請求書を切らせて多数回にわたり所得隠しの行為を行なっているもので、犯行態様は悪質である。これらによれば、被告人会社及び被告人呂の本件刑責は重いといわざるを得ない。

しかし、一方、被告人呂は、本件事実を素直に認め真摯に反省の態度を示し、二度と脱税をしない旨誓っていること、被告人会社では、脱税した法人税につき修正申告した上で、重加算税を除いて納付済みであること、被告人呂には罰金刑以外の前科がないことなど酌むべき事情も認められるので、これらの事情を総合考慮の上、主文の刑に処するのを担当とした。

(求刑 被告人会社 罰金二五〇〇万円、被告人呂 懲役一年二月)

(裁判官 竹花俊徳)

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